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シドクリ通信第94号

【パンデミックな一年】

 院長の紫藤です。今月号はコロナを卒業したかったのですが、やはりまだこの問題に触れざるを得ません。今年はコロナ、大雨、猛暑、台風と感染症や自然災害が多く、落ち着かない1年でした。地球温暖化や環境破壊など、人類のエゴにより私たちの地球のシステムに大きな狂いが生じてきているように思います。まだ今年は終わっていませんが、これから冬に向かってどのような試練が待っているのか、予断を許しません。

 私が学生時代に使っていた1974年発行の「新臨床内科学」という教科書には、「各種ウイルス感染症」という項目があって、「コロナウイルスはライノウイルス同様、成人の普通感冒の主病因となっている」と記載されています。いわゆる“かぜ症候群”を引き起こすウイルスの一つという位置づけです。しかし、令和の時代になぜこのウイルスが暴走して世界を震撼させる存在になってしまったのか、人類に対する自然界の復讐という気もします。

 新型コロナウイルス感染症の経済面に与える影響は凄まじいものがありますが、医療経済面に与える影響も甚大です。病院の経営状況の悪化は言うに及ばず、診療所でも、とりわけ耳鼻咽喉科や小児科などで患者数の激減が報告されています。これは多くの患者さんが受診控えをしている結果と思われます。最近、芸能人の自殺が相次いでいますが、統計的には東京都では6月以降の、全国では8月以降の自殺者の増加が報告されており、精神科医としては頭の痛い問題です。

 このような状況で、通院患者さんの精神症状が著しく悪化しているかと言えば、必ずしもそうでもありません。コロナに怯えて恐怖症に陥っている人も中にはいますが、実際にはstay homeで安堵している人の方が多いと思います。会社がテレワーク対応になったため、通勤から解放され、会社での煩わしい人間関係がなくなり、ストレスが減って楽になったという人が多いのです。コロナ禍における意外な一面を見た思いがします。

 それにしても、日本人はこの暑い夏をマスクを着用してよく頑張りました。アメリカやヨーロッパのマスク着用率の低さを思うと、日本人はあらためて忍耐強い国民だと思います。一人暮らしの高齢者は静かにstay homeしていますし、若者の自覚も高まってきているように思います。10月末現在、COVID-19の日本での感染者数は10万559人、死亡者数は1756人となりました。東京都はそれぞれ3万881人、455人となっています。軽症化が指摘されていますが、私たちは初めての冬を前にして、まだまだ気を緩めることができません。


【心理的暴力】

 臨床心理師の深谷です。8月に「教育現場におけるトラウマの理解と対応」というテーマでスクールカウンセラーの皆さまにお話させていただきましたので、この場でも共有させていただきます。

 心理的暴力は言葉や態度、身振りや文書等によって精神的に傷を負わせることで、小児期であれば児童虐待やいじめ、青年期以降であればDVやハラスメント等の形でみられます。明確な人格否定や中傷、脅し、差別等といった目に見える形で行われる場合もありますが、モラルハラスメントのように精神的な暴力行為が隠蔽されることも多々あり、被害者が周囲に誤解されることも珍しくありません。心理的暴力は事実確認をとりにくいため慢性化しやすく、直接身体に怪我を負うわけではないことから発覚しても周囲の対応は疎かになりがちです。対応が疎かになりがちな理由のひとつには、心理的暴力の深刻さが理解されていないこともあると思います。

 心理的暴力の影響は深刻で、身体的暴力と同等、もしくはある面では身体的暴力よりも影響が強いといえます。まず、脳はあらゆる脅威を同じように処理するので、心理的暴力に曝されると私達の身体は身体的暴力に曝された時と同じように反応します。ストレスホルモンが持続的に分泌され、交感神経が優位になり、「闘うか逃げるか」という反応が続きます。そして次第に心身に広範囲な不調をきたしていきます。脳の変形も報告されていて、親から暴言を受けていた成人は、脳の不必要な部分の減少が進まず、脳の聴覚野の容積が大きくなっていたことが報告されています。このような状態だと人の話を聞き取って会話する時に余計な負担がかかるようになります。また、面前DVに曝されていた成人は脳の視覚野が萎縮し、認知機能の低下やコミュニケーションの読み取りに難しさがみられやすくなります。身体的DVよりも心理的DVを目撃していた成人の方が視覚野の萎縮は強くなり、「DV目撃と暴言による虐待」の組み合わせが最もトラウマ反応が強かったことも報告されています。脳の変形については親子間でのことではありますが、他の対人関係での心理的暴力もそれ相応の大きな影響があるだろうと推察されます。

 最近はコロナの影響もあってか、学齢期ではSNSでのいじめも増えているようです。芸能関係でもインターネット上の誹謗中傷が問題となって訴訟や裁判のニュースが増えており、被害を受けた方々が理解されるようにこれから心理的暴力の社会的な認識が高まっていくことを願っています。


【お知らせ】

・当院は保険医療機関です。初診時と毎月初回の受診時には、必ず保険証をご提示ください。自立支援医療をご利用の方は、受診の都度、受給者証を提示してください。

・処方箋の発行を受けたら処方内容に間違いがないかを確認し、早めに調剤薬局に提出してください。

12月27日(日)から1月3日(日)まで、年末年始休診とさせていただきます。

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