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シドクリ通信第113号

  • shido-clinic
  • 7月28日
  • 読了時間: 5分

【ファンクラブ】

 開業して5年くらい経った頃、友人に誘われて銀座の小さなバーに行きました。年輩のママさんに「お客さんはどんなお仕事をされているの?」と尋ねられたので、「僕は精神科のクリニックをやっていて、患者さんは増えてきたけど、ずっと通い続ける人もいて・・・」などと話したところ、ママさんが「それは先生のファンクラブね」と言ったのです。『ファンクラブ?!』私はその言葉に意表を突かれましたが、「そうか、ファンクラブだったのか」と妙に納得したことを覚えています。

 開業以来、学会で休むことはあっても、病気で休むことはなく、あっという間に歳月が流れていきましたが、この4月に初めて体調を崩して10日間ほど診療を休みました。「先生は確か不死身でしたよね」と患者さんにいじられましたが、やはり私も生身の人間だったということです。

 しかし気がつけば、同世代の勤務医の多くは常勤医から非常勤医に変わり、開業医は診療日数を減らしたり診療所を閉院したり、あるいは亡くなる先生もいて、フルタイムで診療している医師は少しずつ減ってきました。28年間、たった一人で週5日の診療を続けてきた診療体制を変更し、7月からは毎週水曜日は同業の息子が診療を担当することになりました。

 精神科専門医の技術は精神療法です。精神療法とは長い臨床経験を基に、人を洞察し共感する能力が求められる高度な専門技法です。お喋りすれば誰でもできるというものではありません。昨今、精神科専門医や精神保健指定医を持たない医師が、(違法ではありませんが)開業時に保健所に「精神科」を届け出るだけで通院精神療法を算定できるので、精神科外来医療費が膨れ上がり、結果的に精神科診療点数の大幅な削減が起こっています。私は長いこと精神神経学会で精神科専門医制度の構築に携わってきたのですが、精神科専門医の資格が適切に評価されていないことが残念でなりません。

 国家財政が厳しい中、医業経営も厳しくなりました。診療報酬の削減と予期せぬ物価上昇では太刀打ちできません。その他、医師の地域偏在や診療科の偏在、医療機関の倒産、60%の病院の赤字経営など、医療を取り巻く状況に明るい未来はありません。その結果、保険診療に希望が持てない若手医師は、美容外科などに流れていきます。

 毎日一人の医者が50人も60人も診ているわが国の精神科医療とは何なのかと思います。フランスの精神科医の友人に尋ねたところ、「毎日12-3人くらいかなあ」と言っていました。しかし、私たちは日本の制度の中でやるしかありません。今、私にできることは長く診てきた患者さん(私のファンの皆さま?)の治療の修正をきめ細かく図りながら、一緒に伴走することだと思っています。


【長嶋茂雄選手の話】

 6月3日、長嶋茂雄読売ジャイアンツ終身名誉監督が亡くなりました。長嶋名誉監督の死を悼み、私が遭遇したささやかな思い出を披露させていただきます。

 読売ジャイアンツが9年連続してプロ野球日本シリーズを制覇したいわゆるV9(ブイナイン)時代、私は10代の少年でした。私は後楽園スタジアムから都電で5停留所の所に住んでいて、文京区立の中学校に通っていました。

 私は同級生のM君と、しばしば後楽園スタジアムの外野自由席に巨人戦を観戦しに出かけました。試合が終わると一塁側選手通用口に陣取って、多くの少年ファンと一緒にジャイアンツ選手の出待ちをしていました。私はそこで土井選手、柴田選手、黒江選手、城之内投手、圧巻の王選手などからサインをもらいました。当時はジャイアンツ選手のサインが私の宝物でした。

 ある日、デイゲームの終了後だったと思いますが、通用口から突如長嶋選手が現れ、少年たちは色めき立ちました。一斉に長嶋選手に群がりましたが、長嶋選手は足早に歩きだして、私たちはその後を追いました。いくら歩いても子どもたちの集団は大きくなる一方で、長嶋選手は屋内駐車場の奥に停めてある自分の車の前に立ちました。

 長嶋選手は『困ったなあ』という表情を浮かべると、決心したように「それじゃあ君たち、ここに一列に並びなさい」と言ったので、私たちは長嶋選手の豪華な車を取り囲むように整列しました。先頭の少年から一人ずつサインを書き、30分くらい掛けてようやく全員のサインが終わりました。長嶋選手は穏やかな表情で一同を見渡し、「君たち、どうもありがとうは?」と声を掛け、少年たちは口々に「どうもありがとうございます」とお礼を述べました。その後、長嶋選手は車に乗り込み颯爽と駐車場を後にしたのです。

 長嶋選手と接した体験は、少年時代の私の記憶に刻み込まれました。子ども心に『あんなカッコいい大人になりたい』との思いを抱いたのです。先日私は東京ドームシティー追悼記帳所のご遺影に手を合わせてきました。長嶋監督、安らかにお休みください。


【医師・心理職の紹介】

 今春から当院の医師・心理職の勤務が一部変わり、以下のような態勢になりました。どうぞよろしくお願いいたします。


医師

心理職

院長

院長

紫藤佑介

院長

院長

佐多美咲

秋田修斗

秋田修斗

小丸美樹

岩見・橋本・佐多

 

【お知らせ】

・当院は予約制です。初診の方は電話かホームページ、再診の方は電話、窓口、予約サイトで予約してください。

・当院は保険医療機関です。受診時にはマイナ保険証を持参し、カードリーダーで資格確認をお願いします。

・カルテの保存期間は診療が完結した日から5年間です。5年以上受診のない方は再診ではなく初診予約をお取りください。

・手帳をお持ちの方の4月から鉄道運賃の割引制度が拡充され、JRは5割引になりました。詳細は各鉄道会社の窓口で。

 
 
 

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