シドクリ通信第99号
【芳賀さんと寂聴さんのこと】 医師として駆け出しの頃、インドに興味があった私は、たまたま新聞に紹介されていた芳賀明夫さんと知り合いました。芳賀さんは当時講談社の編集者でしたが、学生時代にインド哲学を学び、インド語が堪能で、西アジアに関する文化講座「ダルマサンガ」を主宰していました。文化講座と言っても、インドファン・芳賀ファンが集まって、インド語やヨガを学び、インドカレーを食べたりインドについて語り合うざっくばらんな会でした。 ダルマサンガは年に数回、インド旅行を実施していました。会員であれば誰でも参加できるので、私も何度かご一緒させていただきました。一方、芳賀さんは仕事では瀬戸内寂聴さんを担当していて、寂聴さんのみならず、松本清張さん、遠藤周作さんなどの文化人をインドにご案内していました。 1991年4月、湾岸戦争が終結し、世界中に虚無感が漂っていた頃、私のヨルダン大使館の勤務も終盤を迎え、私は家族を日本に帰し、帰国の時期を待っていました。その頃、突然東京の芳賀さんから連絡がありました。「寂聴さんが戦争反対を唱えて断食をして、58000ドルのカン