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シドクリ通信第95号

【はじめに】

 ダイアモンド・プリンセス号の集団感染から一年が経過しました。新型コロナは二年目に入り、新規感染者数に減少の兆しが見えてきましたが、医療ひっ迫の結果として自宅療養中に亡くなる人が増えています。加えて変異ウィルスの存在も不気味です。皆さまも不安で不自由な生活を送っていると思いますが、私たちは今後も感染対策に努めていかなければなりません。しかしそれは人と人との接触を減らすことを意味し、精神医学的には難しい選択を強いられることになります。状況は予断を許しませんが、メンタルヘルスの維持のためには孤立を避け、たとえ直接会えなくても人とのつながりを大切にしてほしいと思います。

 さて、1月8日には二度目の緊急事態宣言が出されました。周囲を見回すと、多くの会社がテレワークとなり、夜の街は閑散としてきました。以前、自分が身を置いていた病院や保健所の現状も気になるところですが、今の私は自分の仕事だけで精一杯です。病気にならないように注意しながら、愚直に自分の仕事を続けることが最も大切な社会貢献であると信じています。

 本年もどうぞよろしくお願いします。


【ユニバーサルマスキングのすすめ】

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は“感染している自覚がない”無症状の感染者が他者に感染させる可能性があることが分かっています。ここで出てきた概念が、すべての人がマスクを着用するということ、すなわち“ユニバーサルマスキング”という考え方です。

 元々、日本を中心とする東アジアの国々では、日常生活でのマスク着用が行われてきました。しかし、欧米ではマスクは病人が着用するというイメージがあり、感染防止対策のマスク着用が受け入れられていませんでした。しかし、会話や会食で生じる飛沫が感染の原因になることが明らかになるにつれ、マスクの概念も変わりつつあります。「自分が感染しないように」「他者に感染させないように」という概念を超え、たとえ自分が無症状であっても感染している可能性がある中で、マスクを着用することで他者に不本意に感染させることを防ぐという意味があります。

 ユニバーサルマスキングは新型コロナ感染症を防ぐための有用な方法です。最近、新宿区から配られた区民啓発用リーフレット『いま、すぐできる、新型コロナウイルス感染予防』にも、マスクの有効性が記載されています。私も診察室でマスクをしていない患者さんにはマスクをするように促し、マスクを持っていない患者さんにはマスクを一つ差し上げて着用するようお願いしています。ささやかながら、ユニバーサルマスキングの普及に貢献していると思っています。


【マスクでの精神科診察】

 コロナ禍における精神科診察は、考えてみたらとても奇妙です。患者さんも医師もマスクを付け、目だけを頼りに診察するのです。イスラム教の女性社会を彷彿させる光景です。現状では歯科など一部の科を除き、マスクを着用したまま診察を行っています。私が通っている鍼灸治療やヨガも同様です。

 しかし、精神科では何よりも患者さんの表情の観察が重要です。例えば統合失調症には“とがり口”や“空笑”といった症状がありますが、これらはマスクの外からでは把握できません。薬の副作用で起きる口唇や舌の不随意運動も見逃してしまう可能性があります。また、マスクをしていると声が通らず、言葉が聞きとりにくくなります。また、診察時にアルコールを飲んでくる人がたまにいますが、普通ならアルコール臭に気づくところ、マスクでは気づかないことがあります。

 マスクは不便さもありますが、私はマスク自体は嫌いではありません。寒がりですので、マスクは口腔内の保温に役立ちます。飴を舐めていても気づかれません。心がマスクに守られているようで安心感が持てます。私は寝る時もマスクを付けています。マスクの最大の難点は息でメガネが曇ることです。外出時の事故にはくれぐれも注意しましょう。

 新型コロナの世界の感染者数は1億3百万人、死亡者数は223万人を超えました。感染者は多い順にアメリカ、インド、ブラジル、イギリス、ロシア、フランスです。一方、日本の感染者数は38.7万人、死亡者は5688人となりました。ちなみに、昨年の日本の自殺者数は20919人と発表され、新型コロナの死亡者の3倍以上に上ります。

 コロナも大事ですがメンタルヘルスも大事です。人間の緊張感がいつまでも持続するはずもなく、私たちはさすがに疲れてきました。ここにきてワクチン接種の話題が賑やかになってきましたが、穏やかな心で臨みたいと思います。


【お知らせ】

・当院は保険医療機関です。初診時と毎月初回の受診時には、必ず保険証をご提示ください。住所変更、退職、転職時、またはその予定のある方は、受付にお申し出ください。

・自立支援医療をご利用の方は、受診の都度、受給者証を提示してください。

・処方箋の発行を受けたら処方内容に間違いがないかを確認し、早めに調剤薬局に提出してください。処方箋の有効期限は発行日を含めて4日間です。この間に提出ができない方は、処方箋の有効期限を延ばしますので、受付に申し出てください。

・待合室が密にならないように、時間通りの診療に心がけていますので、ご協力をお願いします。院内の換気には注意を払っていますが、さまざまなご不便を感じることもあると思います。可能な範囲で対応しますので、お気軽にスタッフにお申し出ください。

学会参加のため2月13日(土)は代診医による診療とさせていただきます。

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