シドクリ通信第85号

【私宅監置の話】

 『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』 という映画を見ました。日本精神衛生会と、きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)の40周年提携事業として制作されたドキュメンタリーです。席を予約して出かけた会場のミニシアターは満席で、何人かの精神科医の知人の姿も見かけました。

 東京帝国大学の呉秀三(くれしゅうぞう)教授は、1901年に留学から帰国後、精神病者の私宅監置(自宅の一室や物置小屋の一角などに専用の部屋を作り、精神障害者を監置するいわゆる「座敷牢」のこと)を定める精神病者監護法を廃止し、患者を病院で見る精神衛生法の制定を目指しました。そのための実態調査を行い、その結果を1918年に『精神病者私宅監置ノ実況及び其統計的観察』として刊行しました。本年はこの本の刊行100周年に当たるため、呉秀三の足跡をたどり、精神医療の歴史を検証し、今後の精神医療・保健・福祉の発展に資するためにこの映画が製作されたのです。

 映画では当時の精神医療の状況、とりわけ私宅監置について描かれています。精神障害者の処遇をめぐる問題は国のあり方を左右する重大なものですが、わが国の私宅監置は精神病への差別や偏見を象徴する存在として、1950年の精神衛生法施行によって禁止されました。

 それから68年も経過したこの時代に、そんなことがいまだにあるのかとも思いますが、今でも私宅監置に関するニュースが時々流れるのです。本年4月7日には「兵庫県三田市監禁事件」の報道がありました。

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 精神疾患の息子を20年以上監禁 

 虐待していた父親逮捕へ(2018/04/07)

 障害者の息子(42)を兵庫県三田(さんだ)市の自宅敷地のプレハブ内に設置した檻(おり)に閉じ込めたとして、兵庫県警は7日、父親の無職、A容疑者(73)を監禁容疑で逮捕し、発表した。今年1月、三田市が男性を保護して福祉施設に入所させ、県警に連絡していた。  捜査1課によると、逮捕容疑は今年1月18日午前10時ごろから翌19日午後10時ごろまでの間、息子を木製の檻(高さ約1m、幅約1.8m、奥行き約90㎝で、畳1畳分の広さに相当)に閉じ込めたというもの。捜査関係者によると、息子には精神疾患があり、檻での生活は20年以上に及ぶという情報もあるという。  三田市が1月16日に福祉関係者からの通報で自宅を訪ね、檻に男性が入れられているのを見つけた。男性の健康状態に問題はなかったが、三田市は虐待と判断。父親のA容疑者は三田市に対し、息子が暴れるためにプレハブ内に檻を設置し、若いころから中に入れて生活させていた、と説明していたという。

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 精神の病は常にさまざまな矛盾を孕んでいます。呉先生はあの世で何を思うのでしょうか。

【受動喫煙防止法】

 大学生の頃、私は喫煙者でした。当時「煙草のけむり」という歌が流行っていて、酒と煙草が大学生のライフスタイルでした。私は煙草をくゆらせながら、国家試験の勉強をしていました。煙草を吸うと頭が冴え、集中力が増しました。好きな銘柄はセブンスターとハイライト。当時の価格は、それぞれ150円と120円だったように思います。

 医師免許を取得し、25歳の時に煙草を止めました。患者さんに禁煙を指導する医師が煙草を吸っていたのでは説得力がないと思ったからです。煙草は簡単に止めることができました。依存していたわけではなく、ファッションで吸っていたからでしょう。けむりが充満する酒場やパチンコ店は耐えがたくなり、電車やレストランは禁煙席を希望するようになりました。

 保健所に勤務していた頃、同業医師に誘われ医師禁煙連盟に顔を出しました。この連盟の会員は公衆衛生医師が多く、煙草は絶対ダメ!と考える医師の集まりでした。そのことに異論はありませんが、精神科医の端くれとしては、極端な嫌煙運動には抵抗を感じました。

 精神疾患を持った人は喫煙者が多いです。特にアルコール依存症の人たちの喫煙率が高く、断酒治療を導入すると彼らの煙草量はさらに増えました。煙草が心の安定に何らかの貢献をしているからなのでしょう。

 平成に入り、煙草に含まれるニコチンが依存物質であるとの考え方が広まって、ニコチンガム、ニコチンパッチ、チャンピックスなどの治療薬が次々に登場しました。そしてこの度、東京五輪を前にして、受動喫煙防止法が制定されました。多くの人が集まる建物内での喫煙を禁ずる初の法律です。

 国民の健康を守る法律がまた一つ増えたことの意義は大きいと思います。この法律は、当然のことですが、喫煙者の健康を守ることが目的ではなく、煙草のけむりに曝露(ばくろ)される人々の健康を守ることが目的です。来年夏をめどに学校や児童福祉施設、病院、行政機関などで屋内完全禁煙を実現し、2020年4月以降は飲食店のほか職場やホテルも原則禁煙となります。

 オリンピックを契機に訪日外国人の増加が見込まれています。近隣アジア諸国では、すでに公共の場は全面禁煙となっており、日本は後れを取っています。しかし、ここにきて日本人の喫煙率は20%、医師の喫煙率は10%を割ってきました。日本人の健康意識は確実に変化してきていると思います。

【お知らせ】

・保険証は毎月提示してください。変更があった場合は受付までお知らせください。

・自立支援医療をご利用の方は、受診の都度、受給者証を提示してください。

・自立支援医療をご利用の方で保険証が変更になった場合は、お住いの地域の保健センターや役所への届出が必要です。

・処方箋の発行を受けたら処方内容に間違いがないかを確認し、早めに調剤薬局に提出してください。処方箋の有効期限は発行日を含めて4日間です。この間に提出ができない方は、処方箋の有効期限を延ばしますので、受付に申し出てください。

・8月27日から9月1日まで、夏季休診とさせていただきます。

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