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シドクリ通信第110号

【最近思うこと】

 ここ10年くらい、私は早起きになってきたので、毎朝7時半にはクリニックに出勤しています。雑用をしている間に9時になるので診療を開始します。一日中クリニックにいますので、せめて昼休みくらいは外を歩くことにしていて、近所の馴染みの店(10数軒あります)でお昼を食べます。以前は千円札が1枚あれば食べられたのですが、最近はそれではとても足りなくなりました。諸物価高騰の影響が私の昼食代にも及んでいます。電気代もガソリン代も値上がりし、10月からは郵便料金も値上げされました。精神科診療所の診療報酬が大幅に引き下げられましたので、まったく踏んだり蹴ったりです。

 行きつけの飲食店がずいぶん閉店しました。馴染みのタイ料理店の社長さんの話では、コックさんが日本に来なくなったそうです。以前は「日本に行けば稼げる」と来日する人が多かったそうですが、最近は日本では稼げないので、本国に帰ってしまったり、他の国に移ったりしているそうです。閉店してもすぐに新しい店ができるので、さほど不自由はないのですが、飲食店の経営は大変なんだろうなあと思います。

 近くのクリニックの閉院も相次いでいます。最近では内科や小児科や整形外科のクリニックが閉院しました。新宿区ではすぐに若い先生が新規のクリニックを開業しますが、地域医療を担って一緒に頑張ってきたベテランの先生方とのお別れは寂しいものがあります。

 薬の話に移りましょう。最近、処方箋を調剤薬局に出したけど、薬がなかったという話をよく耳にします。開業して27年になりますが、こんなことはかつてなかったことです。歴史のある向精神薬が製造中止になった、鎮咳薬、去痰薬、漢方薬などの在庫がない、日数分の薬が手に入らないなど、困った問題が起きています。「メーカーからの供給不足」「古い薬を製造しても利益が出ない」「海外からの原料の輸入ができなくなった」など、様々な理由が言われていますが、病気の患者さんが薬を求めて、あちこちの調剤薬局を走り回ったなどという話を聞くと胸が痛みます。どの調剤薬局にもすべての薬剤が揃っている訳ではなく、特に向精神薬は精神科診療所の近くの調剤薬局でないと置いていないことが多いのです。私のできる対策としては、近くの調剤薬局にこまめに足を運び、不足している薬や入荷予定の薬の情報を頭に入れておくくらいのことです。わが国は医薬分業で、処方箋は発行日を含めて4日以内であれば、全国どこの調剤薬局でも使えますが、患者さんにはなるべくクリニックの近くの薬局に行き、処方箋を貰ったその日に調剤してもらうことをお勧めしています。


【お知らせ】

・10月から医薬品の自己負担の新たな仕組みが導入されました。後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望される場合は、調剤薬局で特別の料金の支払いが必要になります。どのような場合に「特別の料金」を支払うことになるのかとの例示として、例えば“使用感”や“味”など、お薬の有効性に関係のない理由で先発医薬品を希望する場合に負担いただくことになるそうです。厚生労働省からは後発医薬品の積極的な処方を指導されています。詳しくは最寄りの調剤薬局にお尋ねください。

・当院は予約制です。初診の方は電話かホームページ、再診の方は電話、窓口、予約サイトで予約してください。当院の電話は診療日の8時45分からつながります。最近、予約が混んできましたので、受診日が決まりましたら早めに予約してください。

・自立支援医療をご利用の方は、受診時に受給者証をご提示ください。コンサータを処方されている方は、必ずコンサータカードをご提示ください。

12月29日(日)から1月5日(日)まで年末年始休診とさせていただきます。

 

【今、困っていること】

 10月11日に栃木県で開催された第71回精神保健福祉全国大会で、厚生労働大臣表彰を受賞しました。開業以来、私は保健所のデイケア担当医、作業所の嘱託医、区立中学校の精神科校医から始まり、介護認定審査会委員、精神科初期救急医、精神保健指定医業務、就学相談担当医、企業・病院の産業医などを経て、東京地裁・簡裁民事調停委員、東京都や厚労省の委員会・検討会委員、東京都医師会代議員、精神神経科診療所協会(日精診、東精診)や精神神経学会の理事など、実にたくさんの仕事をしてきました。声が掛かったものを引き受けていただけなのですが、その結果として厚生労働大臣から表彰状をいただけたことは栄誉なことだと思っています。幸いにも私は健康に恵まれ、粛々と業務をこなすことができました。精神医学・精神医療を様々な角度から見ることができた経験は、診療所の外来診療にも役立つことが多かったように思います。

 ここ30年間、精神科診療所が「社会インフラ」として地域に定着してきたのはまことに素晴らしいことです。しかしながら、最近になって新手のチェーン店のクリニックが町中に台頭してきました。そこでは精神科医療の経験がないような医師が日曜日も診てくれて、薬も診断書も出してくれます。ちなみに「精神科」や「心療内科」といった標榜科とは看板やホームページに書ける診療科目ですが、医師免許さえあれば自由に選択できるのです。ここでは専門医の有無は問われません。例えてみれば、私でも「眼科」や「整形外科」を標榜できるわけです。これはおかしい。

 チェーン店のクリニックが台頭してきた背景には、きっと世の中のニーズがあるのでしょう。それを否定するつもりはありませんが、チェーン店から転院してくる患者さんを見ていると、本当に困っている人に手を差し伸べていないように思えるのです。厚労省の対応に期待したいところです。

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