シドクリ通信第101号
【新設「療養生活継続支援加算」について】
精神保健福祉士の山田です。4月に診療報酬の改定があり、療養生活継続支援加算が新設されました。これは、「精神疾患患者の地域定着を推進する観点から、精神科外来への通院及び重点的な支援を要する患者に対して、多職種による包括的支援マネジメントに基づいた相談・支援等を実施した場合について、新たな評価を行う」ものです。具体的には、「医師の指示の下、精神保健福祉士が、当該患者又はその家族等に対し、医療機関等における対面による面接を含む支援を行うとともに、関係機関と連絡調整を行った場合に算定できる」となっています。
行政の文書は難しいですが、要は、先生の診療とあわせて、精神保健福祉士が日常的な相談に応じ、関係機関と連携しながら、患者さんの地域での生活を支えましょうという趣旨です。医療費としては、3割負担の方で1050円、1割負担の方で350円、生活保護の方や自立支援医療をお使いで自己負担がない方は費用はかかりません。
紫藤クリニックのような小規模診療所における精神保健福祉士の活動のほとんどは診療報酬で手当てされていませんので、とても意義のある制度と思います。
すでに数名の方の支援を行っており、先生の定期通院とあわせて、来院時に不安なことや普段の様子などを伺っています。何気ないお喋りや、関係支援機関との緩やかなつながりが大切だと思います。
導入基準を満たすこと、関係機関と関わりのある方が対象になりますが、ご希望の方がいましたら、診察時に先生におたずねください。
【1万人】
院長の紫藤です。今年7月中旬、当院の延べ患者数が1万人を超えました。美術館なら入館1万人ということで、くす玉を割って記念品を贈呈するところです。当院の診察券は1番から通し番号になっていますが、それが25年間で10000に達したというわけです。他科の先生が聞いたら笑われそうな少ない数ですが、私にとってはこれで精一杯でした。25年で1万人ということは、1年で400人ということです。月・火・水・金の午前・午後に1人づつ新患患者さんを取っており、週に8人ですから、年間50週で400人という数字は納得できます。
もっとも開業当初はヒマでしたので、新患も再診も予約不要で、診療時間内であればいつでも診察していました。しかし、患者さんが増えてくるに従い、待ち時間が増える一方となり、私は次第に診察するのが苦痛になってきました。ある日の午後、初診患者さんが6人見え、再診患者さんの診察がすべて終わってから初診患者さんの診察に取り掛かったのですが、診察がすべて終了したのが22時になってしまいました。その時間、近くの調剤薬局はすべて閉まっており、「薬は明日以降に貰ってください」と言ってお帰りいただいたのですが、患者さんはさぞ不快だったと思います。
自分でも当院の医療サービスの劣悪さにうんざりしたものです。こんなことがきっかけとなって、取り敢えずは初診予約制にして、やがて再診も予約制にして、現在の予約システムを導入したのです。今は予約枠がすべて埋まったとしても(埋まることはないのですが)、一日60人が最大です。医療というのは、たとえ精神科であっても、ある程度の緊急性がありますので、予約なしで困った時に来ていただくのが理想なのですが、なかなか理想通りにはいきません。待ち時間が少なく、予約時間に診察が受けられる態勢は、忙しいこの時代、患者さんの便宜を図る上で大切なことと考えています。
外来だけで精神科患者さんを診ていきたいと思って開業したのですが、長くやっていると外来だけでは対応できない、どうしても入院が必要な人も出てくるので、その時は病院にお願いします。最近の病院はベッドが空いていることが多く、快く受けていただけるので大変助かっています。
さて、10000人と言っても、実際には1、2回しか来ない人が圧倒的に多く、私を主治医として選んで下さって、年単位で継続的に通院していただいている方は1割にも及びません。しかし、この1割の方とは生涯の付き合いとなるのが精神科の特徴かと思います。5年、10年、15年と続き、すっかり友人同様の付き合いになってきますが、普段は安定しているものの、ごくまれに調子を崩すという人が多いと思います。
田中クリニックの田中和之先生が、「こころのかかりつけ医」になりたいと仰っていますが、これからは「内科のかかりつけ医」と同様に「こころのかかりつけ医」が必要となるのではないかと思います。
【お知らせ】
・当院は保険医療機関です。初診時と毎月初回の受診時には、必ず保険証をご提示ください。自立支援医療をご利用の方は、受診の都度、受給者証を提示してください。
・処方箋を受け取った方は、調剤薬局に提出する前に、必ず内容をご確認ください。
・新型コロナウイルス感染対策として、当院では待合室が密にならないように、時間通りの診療に心がけていますので、ご協力をお願い申し上げます。
・8月25日(木)から9月1日(木)まで、夏季休診とさせていただきます。
【終わりに】
世の中が落ち着きません。COVID-19は衰えるところを知らず、ウクライナ戦争も一向に収まらず、異常気象、物価高騰に続き、安倍元総理の衝撃的な事件が起こりました。地球の未来に暗雲が立ち込めています。もはや私にできることはありませんが、唯一できる『患者さんを支えていくこと』に力を注いでいきたいと思います。
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