シドクリ通信第88号

May 10, 2019

【中西進先生と令和】

 いよいよ「令和」を迎えました。「令和」の考案者として、文化勲章受章者で万葉学者の中西進先生の名前が上げられています。先生は明確な回答を控えていますが、どうやらこの報道は確かなようです。

 40年以上も前の話ですが、私が浪人中に通っていた都内の予備校で現代文を教えていたのが中西進先生です。挫折感に打ちのめされていた私たち浪人生に対し、先生は穏やかな口調で学問の楽しさを説いてくれました。受験テクニックを学ぶのが目的の予備校で、先生は文化の香り漂う格調高い授業をされました。私は先生の言葉を一言も聴き漏らすまいと授業に臨んだものです。今、思えば、あれほど立派な先生が予備校で教えていたことが信じられませんが、先生は「予備校で教えることは楽しい。なぜなら予備校の学生は熱心に聴いてくれるから」と仰っていました。

 私は午前中、予備校で授業を受け、午後は近くの図書館に籠って自習する生活を一年間続け、医学部に合格しました。受験勉強で学んだ知識が、今の仕事や生活に役立っているとはまったく思えませんが、自主的に学ぶ姿勢はあの時代に養われたものと思っています。

 当時から中西進先生が大学教授として万葉集の研究をされていることは有名でした。先生は最後の授業で「君たちの未来はこれからです。早くこのつまらない生活を終えて、大学で思う存分学問に励んでほしい。いろいろな学問がありますが、すべての学問の基礎は哲学です。どの分野に進んでも哲学だけは勉強してほしい」という話をされました。私は早速、大学の教養課程の選択科目で哲学を選択しましたが、哲学は休講続きで、最後にレポートを書いて単位を貰った記憶だけが残っています。

 いずれにせよ、私の人生の師である中西進先生が考案された「令和」の意味するところの『美しく穏やかな時代』になってほしいと願っています。

 

【児童虐待について】

 こんにちは、臨床心理士の岩見です。私は当院でのお仕事の他に、スクールカウンセラーや教育相談室の中で子どもの臨床に関わる時間が多くあります。今年の1月、小4の女児が虐待によって命を落とす痛ましい事件があり、身近で日々子どもたちと向き合う立場として、何とも言えない辛い気持ちになりました。虐待による死亡事例は、年間50件近くあり、1週間に1人子どもが命を落としているという現実があります。

 児童虐待とは、親権者や成年後見人、さらに児童施設の施設長、現在児童を監視している人などの『保護者』が、児童(18歳未満の人)に対して、①身体的虐待②性的虐待③ネグレクト④心理的虐待、を行うことと定義されています。そして、児童虐待防止法によって、「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない(第三条)」と明示されており、医療現場や教育現場は早期発見に努めることが規定されています。
 虐待の背景には、身体的、精神的、社会的、経済的問題などさまざまな要因が複雑に絡み合っており、さまざまな要因によるストレスが家庭内の弱者である子どもに向いてしまいます。子どもは家庭内のバランスを保つために、その傷を1人で背負います。虐待に及んでしまう保護者の多くは、子育てに苦悩し、解決策が見つからず苦しんでいる為、苦悩を受け止め和らぐよう支援する必要があります。しかし、中には子どもを傷つけている自覚がない場合や、保護者が自分の弱さを受け止めることができず否認してしまう場合など支援の手が容易に届かないこともあり、そういった状況で子どもの安全を守っていくことが難しくなるケースもあるのが現状です。

 また、子どもにとって親という存在は絶対的であり、愛されるために必死でその家庭環境に順応しようとするので、たとえ不適切な養育状況にある子であってもストレートに助けを求めることが難しく、キレる暴れる、無気力、学力不振、不登校などさまざまな行動で表現することもあります。そのような中で生き延びてきた子どもは、著しく自己肯定感が低く、人と信頼関係を結ぶことに不安を覚え、深い悲しみや怒りを抱えます。
 危機的状況にも関わらずケアを受けられないまま、中には大人になって初めて自分が虐待的な環境にいたことに気づき、その傷を癒す作業が必要となる方も少なくないと思います。さらに、子育てをする立場になった時に、自身の子どもの頃の虐待的記憶が想起され、心理的に混乱した状態で、虐待をしてしまうというケースも稀ではなく、これは"世代間連鎖"と言われます。加害者となってしまう養育者も、傷つき追い詰められていることが少なくないのです。
 傷つきや辛さから虐待に及んでしまう保護者にも、その傷を一身に背負う子どもにもケアが必要です。しかし、事件を受けて、寄り添うだけでは救えない命もあるということを痛感します。政府は児童虐待防止法の改正に向けて動き、虐待対応のシステムの問題点を指摘する報道もありますが、子どもの安全を守ることが何より優先される体制が整うことを願ってやみません。私自身もあらゆるサインを見逃さないよう常にアンテナを高くし、寄り添う気持ちと危機意識を持って臨みたいと思います。

 

【お知らせ】

・保険証は毎月提示してください。変更があった場合は受付までお知らせください。

・自立支援医療をご利用の方は、受診の都度、受給者証を提示してください。

・自立支援医療をご利用の方で保険証が変更になった場合は、お住いの地域の保健センターや役所への届出が必要です。

・処方箋の発行を受けたら処方内容に間違いがないかを確認し、早めに調剤薬局に提出してください。処方箋の有効期限は発行日を含めて4日間です。この間に提出ができない方は、処方箋の有効期限を延ばしますので、受付に申し出てください。

・学会出張のため6月19日(水)は休診、21日(金)と22日(土)は代診とさせていただきます。

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