シドクリ通信第111号
【はじめに】
あけましておめでとうございます。昨年は政治、経済、自然災害、サイバー犯罪、マスメディアのあり方等々、様々な分野で重大な問題が起こりました。世界に目を転ずると、依然として各地で紛争や内戦が続いています。地球の将来に大いなる不安を感じつつ、それでも私たちは生きていかねばなりません。私は今年も当院の700人余りの患者さんのメンタルヘルスの維持に微力を尽くして参りたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【はたらく細胞】
「はたらく細胞」は体内の細胞を擬人化した内容の映画です。日本医師会が後援していますが、医師会員向けの試写会に応募したら当選しましたので、公開の1か月前に日本医師会館で鑑賞してきました。
この映画では赤血球、白血球、血小板など血球成分の役割が学べ、病原菌が体内に侵入する状況や腫瘍性変化が起こる状況などが分かり、私は生理学、免疫学、血液病学などの授業を思い出しながら鑑賞しました。精神科は関係ないのかと思いきや、「笑って過ごせば免疫が高まり、病気が良くなる」といった場面もあって、メンタルヘルスの大切さにも言及していて嬉しく思いました。医学部を目指している女子高校生役の芦田愛菜さんや不摂生な生活をしているその父・阿部サダヲさんも上手でしたが、赤血球役の永野芽郁さんは真面目に酸素を運び、白血球役の佐藤健さんは病原菌と戦ってカッコよかったです。
人間のからだの仕組みを楽しく学べる作品です。是非、ご覧になって下さい。
【五香宮の猫】
もう一つ映画の話題です。想田和弘監督は以前「精神」という映画を作りました。精神科診療所の日常を描いた観察映画です。その想田監督が「五香宮の猫」を作りましたので、私は青山学院の近くの「シアター・イメージフォーラム」で鑑賞しました。私の好きな新宿のK`s cinemaや東中野のポレポレ東中野などと並ぶミニシアターです。
この映画は岡山県牛窓町の神社の話ですが、神社は捨て猫の名所となっているようです。想田監督は夫婦で牛窓町に住んでいて、この神社の猫を観察しています。猫を捨てる人がいれば、捨てた猫に餌を与える人もいる。糞尿の問題や猫の去勢の問題を地域住民が集まって議論する。猫を去勢するために、嫌がる猫を一匹ずつケージに入れて住民が運んでいく。猫が亡くなると境内に穴を掘って埋葬する。
観客はたったの5人!でしたが、これは想田監督の観察映画の名作と思いました。猫を飼っている人もそうでない人も、是非ご覧になってください。
【医療センターのこと】
「医療センター」という病院は全国あちこちにありますが、ここでは新宿区戸山の国立国際医療研究センター病院についてお話しします。私は勤務医時代の最初と最後にこの病院に勤めました。医師になって初めて研修医として就職したこの病院には、臨床を学ぶために多くの若い医師が集まっていました。私が選んだ精神科には外来と閉鎖病棟があって、重症患者さんの入院も引き受けていました。私は恩師の冨永一(はじめ)先生など、ベテランの先生方から精神科医としての手ほどきを受けました。
当時からここは国際医療協力を指向する病院でした。この病院に籍を置いて、海外で活躍された先生方は沢山いらっしゃいます。その後、この病院は結核やエイズなど感染症治療で有名になり、今は新型コロナウイルス感染症の治療や研究で知られるようになりました。この間、精神科がどうなったかと言うと、病院の建て替えで病床がなくなり、今や外来もなくなり、精神科医の仕事は院内のリエゾン(連携)サービスだけになってしまいました。よって、現在はこの病院の精神科を受診することはできません。OBの一人としては、故郷を失ったようで誠に寂しいです。私が病院を退職する時に精神科の医局の先生方から贈られた時計が、今も当院の待合室で時を刻んでいます。
私が医療センターのOBであるという事情もあって、当院には医療センターに入院歴・通院歴のある患者さんが多く、また、センターの他の診療科にお世話になっていたという方もいらっしゃいます。
実は当院は医療センター精神科に在籍していた医師で作るOB会(はじめ会)の事務局をしています。年に1、2回集まって昔を懐かしんだり、お互いの近況報告をしたりしているのですが、医療センターに長く在籍した先生から、数カ月程度の先生まで様々です。コロナの頃は、病院に迷惑をかけてはいけないとの思いで細々と会を開いていたのですが、そろそろ会を公言できる状況になってきたのは、まことに喜ばしいことです。
【お知らせ】
・昨年10月からの先発および後発医薬品処方の扱いについて、ご理解とご協力をいただきどうもありがとうございました。当院では9割以上の患者さんが後発品の処方に同意されましたが、先発品を希望する患者さんも一定数いらっしゃいます。当院にとっては医薬品に対する患者さんの意識を知る機会になりました。
・当院は予約制です。初診の方は電話かホームページ、再診の方は電話、窓口、予約サイトで予約してください。当院の電話は診療日の8時45分からつながります。最近、初診予約が取りにくくなってきましたので、希望者は早めに予約してください。
・当院は保険医療機関です。受診時にはマイナ保険証を持参し、カードリーダーで資格確認をお願いします。お持ちでない方は保険証、資格確認証の提示でも結構です。自立支援医療をご利用の方は、受診の都度、受給者証をご提示ください。ADHD治療薬コンサータを処方されている方は、必ずコンサータカードをご提示ください。
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