シドクリ通信第106号
この度、令和5年度福祉・医療・衛生部門の東京都功労者に選ばれ、東京都知事より表彰状を頂戴しました。身に余る光栄ですが、今後も保健衛生の向上に尽力して参りますので、宜しくご支援ください。(紫藤昌彦)
【AIにより医療はどう変わるのか】
近年、私たちの生活に急速にAI(artificial intelligence、人工知能)が導入されるようになりました。話題のchatGPTが生成した文章を読むと、そのレベルの高さに驚かされますが、テレビのニュース番組でもAIアナウンサーが自然な音声で原稿を読み上げる時代になりました。
医療分野では診断や治療の一部をAIで代替する方法が研究されています。ある医療情報会社が各科の医師に20年後にどの程度の業務がAIに代替されるか尋ねたところ、放射線科の医師の31.0%は完全に代替できると回答し、次いで臨床検査科30.5%、病理科25.0%と続きました。一方、産婦人科、外科などの診療科はAIに代替されると考える医師が少なかったようです。
診療に関する業務としては、鑑別診断、カルテ記載、問診をAIに代替してほしいと考える医師が多く、診療以外の業務では紹介状・診断書作成、保険会社関連の書類など、書類作成の代替を望む声が多いことが分かりました。実際、私も多くの時間と労力を要する書類作成には日々手を焼いています。
以前より、人の心を扱う精神科はAIには代替しにくいという意見が多かったのですが、最近はもしかしたら代替できるのではないかという意見も出てきました。
もしAIが精神科医だとしたら、いつも冷静沈着で、不安も怒りもなく、患者さんにいら立つこともなく、病状に合わせた最適な対応ができる優秀な精神科医になることでしょう。しかし、AIは課題に対応する能力は高い反面、他人の苦悩に共感したり傾聴する能力は低いかも知れません。いっそのことAIに喜怒哀楽の感情や自己実現の欲求や死の不安も持たせることができたら、完璧なAI精神科医ができることでしょう。その結果、精神科医という職業は必要なくなるのかも知れません。
将来、私たちは優秀なAI精神科医に診てもらう時代が来るのでしょうか。しかし、いくらAIが進歩したとしても、私は優秀でなくても良いから優しい心を持った人間の精神科医に診てもらいたいと思います。
【障害者手帳について】
精神障害者保健福祉手帳は、患者さんが一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には様々な支援策が講じられます。患者さんから時々、精神障害者保健福祉手帳について質問されますので、私が以前書いたものに若干修正を加えてお示しします。
1.精神障害の方が申請できる手帳について教えてください。
精神疾患の診断を受け、精神科へ6カ月以上通院していれば、「精神障害者保健福祉手帳」の申請ができます。地元の保健センターや区市町村の申請窓口に行き、精神障害者保健福祉手帳の説明を受けて、申請書用紙と診断書用紙をいただいてきてください。申請書は本人が書き、診断書は医師が書きます。医師の診断書の作成には2週間程度の時間が必要です。その後、必要な書類を窓口に提出し、認定されれば3カ月程度で手帳が交付されることが多いようです。病状が重い順に1級から3級までの区分があり、それぞれの級によって、受けられるサービスの内容が若干異なります。
2.手帳の診断書を書かれる時、どのような部分に重点を置いて診断書を発行しますか?
診断書の項目に沿って、病名、病歴、治療経過、現在の病状などを書き込みますが、日常生活能力の判定、日常生活能力の程度の記載が特に重要となります。この辺りがよく分かるように、患者さんは日頃から主治医に情報を伝えておいてください。主治医は患者さんの申告通りには書けませんが、これらの情報は適切な診断書の作成に役立つことは多いと思います。
3.手帳の申請に反対する家族は多いですか?
精神障害に対する誤解や偏見は家族の中にも見受けられます。精神障害であることが受け入れられない、精神科治療に否定的、精神障害者保健福祉制度の利用に反対などのご家族の話はよく耳にするところです。じっくりとその必要性をご家族と相談していきましょう。地域の家族会などに参加すると、さまざまな家族の声を聞くことができます。そのような場所に足を運び、一緒に学んでいくことも大切と思います。
4.障害者年金と障害者手帳に関連はありますか?
障害者年金と障害者手帳とは別の制度です。申請窓口も審査機関も異なります。障害者年金が決定すれば、年金証書の提出をもって手帳用の診断書は不要になりますが、申請書の提出は必要です。これとは逆に、手帳を持っているからといって、同じ等級で障害者年金の支給が決定されることはありません。
5.手帳のメリット・デメリットを教えてください。
メリットとしては、就職の際、障害者雇用枠で応募できるということです。また、医療費や公共料金などの助成や割引が受けられること、所得税、相続税、贈与税などが優遇されることなどがあります。
デメリットは特にありませんが、周囲の人からの偏見を心配する人は、取得することに抵抗があるかも知れません。しかし、手帳を人に開示する義務はなく、使いたくなければ使う必要もありませんし、必要なければ返納も可能です。
【お知らせ】
・当院は予約制です。最近、予約状況が混んできましたので、受診日が決まりましたら、早めに予約してください。
・当院では保険証以外にもオンライン資格確認ができます。マイナンバーカードで保険診療を希望される方は、受付のカードリーダーをご利用ください。
・12月28日(木)より1月4日(木)まで、年末年始休診とさせていただきます。
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